ガイドヘルパーの話を聞いてみよう。


ガイドヘルプ座談会②
ガイドヘルプ座談会③

 

座談会①【ガイドヘルパーから始めよう】って話。

 

はちくりうすのマルクスさん、川崎の介護事業者のたけちゃんと店番中村が、

ガイドヘルプについて色々話しあいました。

Transit-Cafe Colors 2015.11.12

 

※ はちくりうす = 目黒区のキャンペーン参加事業所

※ 店番中村 = キャンペーンいいだしっぺ

 

中村(以下:中)/ガイドヘルパーからはじめようというキャンペーンは、障害をもった人が外出をするサポートをするガイドヘルパーが圧倒的に足りないと実感している事業者が集まって、1年間かけてキャンペーンをやっていこうというものです。キャンペーンを開始したなかで、写真などを担当してくれている柴田さんから、柴田さんはガイドヘルプや障害に関してまったく知らないところから参加してくれていますが「そもそもガイドヘルプってなんなんですか、そこをはっきりしてもらわないと困りますよ」と言われ「ガイドヘルプってなんなのか、それをやるガイドヘルパーはどんなことをする人なのか、実際どんな人たちがやっているのか、話を聞きたい、そうじゃないと僕はちゃんとした仕事ができないよ」と。そこまでは言ってないか。

なので今日はそういう話を、ガイドヘルプの第一線で活躍している竹嶋さん、マルクスさんにゲストとして来ていただいて話をしていただこうと思います。ではまず自己紹介を。

マルクス(以下:マ)/こんばんは。マルクスと申します。フィリピンから来ました。日本には5年くらい前からいて、この仕事をやって5年くらいです。今はNPO法人はちくりうすという事業所でサービス提供責任者としてやらせていただいています。

竹嶋(以下:竹)/竹嶋と申します。川崎の社会福祉法人でホームヘルプ事業を担当しています。私もサービス提供責任者をやっています。今のホームヘルプ事業にかかわって6年目、ちょうど5年半になったところかな、になります。その前からも20代のころから知的障害の方を中心に施設でのケアなどを続けてきています。そのなかで今この位置にいるという感じです。

中/竹嶋さんは、このキャンペーンの一環として風雷が11月、1月、3月とガイドヘルパー養成研修を東京都指定でやりますが、講師をしていただけるということでよろしくお願いします。

僕中村は、風雷社中の代表をしていますが、同時に風雷社中がやっている支援事業ふう、東京都指定の居宅介護事業所のサービス提供責任者をやっています。現場にも当然出ています。僕は25年くらい障害福祉に関わっています。25年くらいのキャリアで、30代後半くらいまでは施設系の仕事をしていました。30代後半からガイドヘルプを中心とした居宅介護事業を立ち上げて今に至るというところです。こんな3人で話をしていきたいと思います。

さっそく本題ですが、みんなそれぞれ、ガイドヘルパーをやったことない人たちにガイドヘルプってこういうことをやっているという説明していただきたいと思います。ではマルクスさんが思うガイドヘルプを。

マ/ガイドヘルプは、利用者さんたちが行きたいところに連れて行くという仕事ですかね。利用者さんたちの世界を広げる、利用者さんが同じ場所に行くだけでなくてほかのところを提案しながら世界を広げる仕事ですかね。

中/ちなみにはちくりうすでは利用者さんはどんな障害の方が多いんですか?

マ/知的障害が多いです。

中/大人?子ども?

マ/子どもとか、大人の方もいます。

中/では知的障害のある人たちの世界を広げていくのが、マルクスさんがやっているガイドヘルプの事業ということですね。では竹島さん。

竹/ガイドヘルプは移動支援という言い方をされたりします。まさに移動の支援。そのサービスです。マルクスさんがおっしゃったように世界を広げるというところもあるし、生活の一部としての移動部分、外出をするとか、生活の中には家での生活もあるし、日中は作業所に通っている方は作業所で働くとか、そうでなくてもなんらかの活動を過ごすというなかで、屋外に出て、家や施設でないところでの活動でも、生きていくなかでの一つの部分をサポートする仕事なのかなと思います。うちは78割くらいが知的障害。児童も含めてですが。身体障害をお持ちの方が残り2割くらい。精神の方もいますが精神オンリーの方はいなくて、知的プラス精神。

中/マルクスさんのところは身体障害の人はいない?

マ/何人かいますが、僕が関わっているのは知的障害。

 中/3障害を1つのサービスでというところで、知的、身体、精神、あと難病の方も入ってきているところなので利用者さんはかなり多岐にわたりますが、風雷社中も9割知的障害ですね。身体と知的重複の方もいるけど、身体オンリーの方はいなくもないけどほとんどいないかな。大田区は事業所的に住み分けがあるところがある。身体を得意としている事業所と知的を得意としている事業所みたいな感じで、風雷は比較的知的障害に特化した形でやっています。3者ともメインの対象は知的障害の人たちということで、マルクスさんからさっき世界を広げるという話がありましたが、具体的にどんなところにどんなふうに、どこに行きたいと言われたりする?

マ/僕の利用者さんは決まった場所にしか行かないです。僕から提案してこんなところがありますよ、とか。食べものも同じものばかりを食べていて、今度ほかのものを食べてみない、などとやっています。

中/知的障害のある人は経験則が少ないことと、ガイドヘルパー以外の人と外出するときに、単独で出られる人は自分の好みで動いている人はたくさんいるけど、誰かのケアが必要な人は基本ご家族と一緒に外出するパターンが多くて、そうするとどうしても家族の幅のなかでの行先だったり食べるものの志向だったりするので、それをマルクスさんとしてはもっと広げて、いろんなところに行こうよ、いろんなものを食べてみようよ、という提案をするわけですね。竹島さんどうですか?

竹/同じようなパターンで余暇の過ごし方をされている方はたくさんいます。あえて外していくというか、どうしてもここに行きたい、行きたいのは否定はしないけど、こうでなくちゃいけない、昼ごはんはラーメンじゃなきゃ嫌だみたいな。いやちょっと隣のとんかつや入ってみようや、とか、そういうトライする場というか、そういう意味での面白さはあるかなと思います。もちろんご本人にとってどうかというところがメインにはなるけど、ご本人といっしょにそれを越えてみるのもどうかという面白さは、ガイドヘルプならではかなと思います。

中/そこは同感で、けっこう指摘を受けることがあるんですよ。ヘルパーが行きたいところに連れて行ってるだけじゃないの、押しつけてるんじゃないの、本人そこに行きたいと思ってる?という疑問が投げられることがなくはなくて。自分のなかでも実は疑問で、俺今押しつけてないかな、こいつ本当に行きたいと思ってるのかな、と。でもよくよく自分の経験を思い返してみたときに、僕らも新しい場所に行く機会って自分のなかに動機がなかったりしないかな、と。仲のいい友達に誘われてライブに行ったとか、ここおもしろいから付き合えよと言われてデパートに買い物に行ったとか、山なんか上りたくないけど、どこか遊びに行こうよとなったときに山登りが好きな友達に山に行くぞと言われてひどい目に遭ったとか。そういういろんな角度からの外圧を受けて行先とか余暇の過ごし方が増えていく。でも知的障害のある人たちの多くはそういう友達づきあい、横の付き合いが少ないし、認知の問題でそれを取りづらいから、自分のなかに選択肢をもってない。だからマルクスさんが言ったように同じところに行って同じものを食べるのが習慣化している。でも外から情報や経験を提供して広げていく作業なんだろうと思う。たまにそれは違うよと言われるのが、ガイドヘルプは友達みたいな支援をすると僕はけっこう言う。ガイドヘルプが友達かについてはいろんな考えがあるけど、友達と経験するようなことをガイドヘルパーと経験することによって、家族ではなしえない広がりだったりイレギュラーだったり、ある種押しつけなんだよね。良かれと思って押しつけでやる。でもそれは友人知人レベルでの浅い関わりのなかでの押しつけなので、本人を凌駕することはないようにできるんじゃないかと思っている。

竹/友人ライクな関わり、友人ではないけどニュアンスとしてそれに近いものがあるという話、それはボランティアでもいいじゃないという発想もある。本当の友人に限りなく近いボランティアと行ってもいいじゃんという考え方。でもガイドヘルプはそれぞれ仕事としてやっているというところでまた一つ意味合いが違ってくる。意図したずらし方、意図した外圧になるという。そこにはヘルパー個々の思いがすべてなんではなくて、ある程度のストッパーがかかる。仕事として関わるというところに。友人ライクなというのは、あえての友人ぽい関わりというところで、それがだから仕事、サービスとして成り立っているというところかな。

中/あと友人という言葉を使うのは、そのスタンスじゃないと、最近支援者という言葉が鼻くそほじるくらい嫌な感じがしていて、提案をしていくとさっき言ったけど逆に僕らも利用者から提案されるわけじゃない。僕はここに行きたいと言ってくれる人は言ってくれるし、行動する人は行動する。僕らもそれに付き添って、それは自分ではしない体験なんだよね。だからうちのヘルパーさんに最初に言うのは、利用者さんの望みをかなえるということと、自分がいいと思うことを提案していく、この2つが並列してあるといいと思うし、2人とも経験したことがないことを一緒に経験してみるのはすごくいいと思う、という意味で、友達みたいな支援ができるといいと思っています。

 

 もう一つ、事業者としての目線でのガイドヘルプは、そう言いながらも今のは行動の範囲を考えていくというところだけど、もともと何らかのサポートが必要だから誰かが付く。それをケアと呼んでいるけど、ケアの内容に関して、知的障害のある人と外出をする場合、その人たちはどんなサポートを必要としていて、実際にどんなサポートをしているのかという話を竹嶋さんから。

竹/外出するというのはいろんな場面にぶち当たるわけです。移動するにはバスや電車に乗らないといけなかったり。自分1人で、無料パスみたいなものを持っていてバスに乗ることに慣れている人もいるし、それを持っているんだけど提示をするのが難しいからヘルパーが一緒に出して、料金を払ったりとか。切符を買うのも、渋谷まで行きたいが渋谷までいくらかわからない、財布に小銭はあるけどどれを入れたらいいかわからないという方がいればそこをサポートする。でも自分で220円だなと思って入れて押せる人もいる。それなら押してもらえばいい。どこが難しいか、その難しいところをサポートしていくと、物理的な部分での一通りの外出はできたりする。もうちょっと中の話に行くと、レストランに入って食べることはできるが何を食べたらいいかを自分で選択するのが難しい方もいる。食べたいものはきっとあるけど注文するのが難しいというときに、最近のファミレスはみんな写真になってるので、どれがいいかページを見ながら一緒に選んでいく。こっちで決めてしまうこともできるかもしれないけど、それは全然支援じゃなくて、どう本人が決めるかをサポートすることで、本人は食べたかったものが食べられる。外食ができる。それをかなえるためにどこまでサポートするとなったときに、メニューを一緒に読む。それとかもう1回外に行って、ラーメン屋だったらどんな色のラーメンがいいのか、白い塩ラーメンがいいのか、茶色い醤油ラーメンがいいのかとかをもう一回見て、やっぱりこれがいいとか。それを具体的にサポートする。さっき言った、物理的に勘定がどうとかという部分と、自分の気持ち、考えを表現して伝えるというサポートもやっている。

中/マルクスさんはどうですか?どんなケアを?

マ/ほとんど竹島さんが言ってましたが、あとはお手洗いの声かけとか、多くの方は自分でお手洗いに行けるけど、自分で行けない方もいるので、お手洗いに行くのに声かけするサポートとか。

中/今出たのはお金の管理、行先を選ぶ手伝いをしたり、食べ物を選ぶ手伝いをしたり、衛生面のケアをしたりですね。

竹/あと安全確保もありますね。

中/飛び出したりする人もいない?車が来ると危ないというのがよくわかってなくて、楽しいことがあるとぴゅっと飛び出しちゃう人とかいるよね。そういうときは?

竹/最終的には羽交い絞めも辞さないというか、もし飛び出しちゃう人はもちろん守るけど、その前に支援があるじゃないですか。言葉かけで、危ないというのを予測して動いてから、あそこの信号赤だと止まろうね、と信号のずいぶん手前から話をしながら行くとか、手をぐっと握って行かないように防ぐのではなくて、本人の注意をそこに向けながら移動するとかやったりしますね。

マ/急に飛び出す、走る利用者さんがたくさんいるので、どこに行くのとか・・・

竹/電車とか乗ってても毎回ひやひやする。ホームで電車を待っているとき、何が安心するって電車が入ってきて目の前を通過する瞬間がものすごく安心する。あの緊張感はずっとやっているけどずっとついて回る。無事に電車にぶつからなくて良かったという。そういうときはどうしているかというと、電車が来るから危ないよというのが引き金になっちゃう人もいるかもしれない。どれどれ、と見ちゃう人は危ないわけで。その人にもよるけど、電車が入ってくるまではけっこうほっとく。一緒に手をつないでいたりするけど、いよいよ電車が入線してくる瞬間に、足元黄色い線見えますか?と意識を電車から切り離す。ここ踏んでます?と。そうすると一瞬こっちを見てやっている間に電車が入ってくるとか。わからないタイミングで来るのが一番怖いし慌てるので、その前を準備しておく。ずるいやり方だけど。

中/根本はその人がどういう人なのかを知るということだよね。どういうときに危ない場面を作ってしまう人なのかを知る。だからインテイクのときって一番大変じゃない。知らないで家族からの情報だけで、多くの家族は一番最初の外出のときはお母さんが私も一緒にというパターンもあるけど、初めてなのに明日あそこに迎えに行ってそのままどこかに行ってくださいみたいなのもよくあって、そのとき短い30分とか1時間の間にその人を知る努力をものすごくする。それはイレギュラーなことですが。

僕らみたいな人間がいて、こういう傾向がありますよというのをヘルパーさんに伝えてそこからスタートなのでね。

中/安全を確保するのは、その人を知るのが第一。だから僕らもすべての利用者さんの安全を確保できるかというと、知らない人の安全確保は本当に大変だしできやしないのが実際。僕らがヘルパーに求めることは、すべての人の安全を守れるようになってなんてまったく思っていなくて、この人と仲良くなって、この人がどんなときにいらいらして、どんなときに興奮して、どんなときに喜ぶのかをよく知ってください、そうすれば安全も確保できます、ということかなと。たまにいるんですよ、僕いろんな人を見てきたから絶対怪我なんてさせませんよ、という。そういう人に限ってはなから羽交い絞めにしていたりする。それは余計危ないぞみたいなところがある。あと、気をつけていることとして、道路を歩くときに、車に、僕は人をサポートしていますよというのをアピールする。対向車が来たときに運転手の顔を見るようにしている。あと曲がるときとか、通行人って動かないものだと思って運転している。じっと見てて、アイコンタクトを車とするようにする。あとわざと自分が歩道からはみ出して歩いて、ここ人が歩いてますよというアピールを車に対してするとか。なるべく利用者さんに圧をかけないように、こっちに行って危ないからあっちはやめて、などはなるべくしないように、周りに対してアプローチしたりはするかなと思います。

あと、ケアの続きで、障害が重度の方の場合、トイレとか、食事介助があったりしますがそのへんはどんな感じで対応してますか?

竹/トイレは、行きます?トイレ行っときますか?というのが基本。1時間半で1回行っておきたい人とかは傾向があるのであらかじめそういうプランで、どこの駅についたらとか、さっき食事の後に行ったからこのへんで行こうかとかあるし、それがわからない方はトイレどうですか?と聞いちゃったりしますね。

マ/そうですね。利用者さんに行きませんか?と聞いてます。

竹/トイレの介助はそこから実は始まっていて、実際の排泄介助というよりその前の段階の、トイレにスムーズに我慢しない状況で行けるかという。

マ/間に合わないときもありますね。

中/排泄が自立してない利用者さんもいるじゃない。紙パンの方とか。外で交換したりとかはどういう感じですか?

竹/あまりないけど、紙パンの交換する以前に時間で見極めてそれ以前の排泄ができるようにという動きをとることが多いけど、どうしても出ちゃう人もいるし、交換できる場所はあまりないですよね。身障用のトイレとか広いけど、はたしてその中でどれだけゆとりをもってできるかというと正直難しいんじゃないの、と。テープ式のおむつなら最悪立ったままできるけど、はかなきゃいけない。脱ぐときは破けばいいけど、はくときは靴を脱がなきゃいけない状況。きれいなホテルのトイレだったらいいけど、床に靴下で触れられるもの悪いなと思うとなかなかできない。座っていただくとか、できる場所というと本当にスペース、機会が限られる。

中/現場の話になるけど持っておくといい情報だよね。どこに更衣が可能な身障用トイレがあるかとか。

竹/身障用トイレはベッドみたいに開くとフラットになる。あれはあの上でやらなくても着替えを置けるから便利。

中/そうそう、カバンを置いたりとか。マルクスさんは外でのトイレ介助は?

マ/うちでは紙パンツの方とかはいないです。自分でトイレに行ける方が多いですが、声かけをして、行きませんか?という方が多いです。

中/うちは大便が自分でできない方が多い。排泄が自立していなくて、時間がランダムで、長時間の支援のときに紙パンの中に排泄してしまう場合があります。そのときに障害者トイレが、少ないけど昔よりすごい増えたので、けっこう障害者トイレを使って洗浄までしたりします。

竹/知的の方が多いと同性介助が多いけど、車いすの方で男性の利用者さんでヘルパーが女性というパターン。排泄は自立していて、自分で車いすからトイレに座ることもできて、ふき取りなども全部できるけど、車いすは押してもらわないといけないという人が何人かいて、排泄の介助が非常に難しいときがある。全然異性介助でも気にしませんよ、と利用者さんもご家族も言うけど、こっちは気にするんですよ。身障者用トイレは非常に便利で、入ればいろんな設備があるし広いけど、入ったら入ってなきゃいけない。最近技術が進歩したために、最近のは手をかざすとドアが開いて、中で手をかざすと閉まって使用中が付く。外からは絶対に開かない。それは中で排泄をする、しかも1人で排泄する前提なんですね。もしくは介助者がペアで排泄の介助をすることで、安全にして、鍵も確実にかかるという安全面は確保されているけど、男性の利用者さんを女性のヘルパーが中に入れて、あとは自分でよろしく、出てますね、というのができない。出ると使用後になってしまい、外から閉めると電気が消える。

中/昔の手動の鍵のやつは、閉めて鍵をかけないで待ってるんだよね。

竹/外で立ってれば人入ってこないから、今使っているんでと言えるけど、今は自動だから。瞬間芸はできるんですよ。中でセットして、あとよろしくって言って、中のボタンをタッチして出ると施錠して今度入れない。非常に難しい。だったら無理して壁づたいで普通の男性用トイレに入ってもらったほうが安全。それか中につっこんで誰かほかのトイレ利用者に任せちゃう。昔と比べて非常に難しくなってるね。

中/でもそれが便利な人もいるからね。同性介助の還俗がとれていれば解決する。同性でも排泄はプライバシーのものだからできれば1人でしたほうが絶対にいい。

竹/介助の度合いが、そこまで移動するだけしか必要ない人に、個室の身障トイレに介助者がいること自体がどうなの、という話にもなるよね。そこが選択できれば本当はいい。広さとか、便器に座ったままぴっとやればドアが閉まるとか。

中/食事の介助はしない?

マ/車いすの方の食事介助はやってますね。自分が・・・食べ物を口に入れる介助はやっていますが、細かく切らないとつまるので。

竹/ヘルパーの介助がないとおいしそうなものでも自力では食べられなかったり、自分で細かくすることが難しかったり。

中/量に圧倒されて食べられない利用者さんていない?たとえばラーメンが好きなんだけど、一人前どーんと出てくると食べられないし進まない。それが小さい小どんぶりもらって取り分けるとさくさく食べてくれる。特に年齢が低いとある。たぶん自分を食べ物にもってくるのができなくて、持ってきて食べたいという習慣かな。

竹/あとガイドでおもしろいのは、ご家族からいつもこういうものを食べてますよという説明があったりするけど、あえて外してみて、いつの間にかこんな大人っぽいメニューも選んでみたとか、そういうのは面白い、こちらも新たな発見ですね。

中/最近ラーメンは一般化した、ここ10年くらいで誰でも食べるものになったけど、ガイドを始めたころは、ガイドヘルプでうちの子は初めてラーメン食べたんですよ、というのが何人かいた。基本お母さんが一緒に行動するなかで、ラーメン屋に入る習慣がない女性は多かった。最近は1人で入る人も増えたけど、ラーメン屋に女の人1人では入りにくいというのがあったみたいで、連れて行ったことなかったというのが何回かあった。最近は聞かなくなったけど。あと仲のいい利用者さんで、本人はあまり自分から選んで行けないから、こちらからいろいろ提案するんだけど、俺が入るときは必ずメモが入っていて、辛いものはやめてくださいって。

マ/うちの利用者さんで、息子さんは卵が苦手という人がいた。うどん屋さんに入って、卵食べていた。それをお母さんに報告したら、うちでは卵料理を出してもまったく手をつけないんですけど、と。食べる機会がないのかも。

中/生魚食べさせたことがなかったという子で回転ずしに初めて入って、そこから生魚を食べられるようになったというのもあるかな。

 

ちょっとまとめに入りますが、ガイドヘルプは障害があるために単独で行動が難しい人たちに対して、一緒に行動の幅を広げたり本人が望むところに行けたりする、ということ。それに伴って安全の確保や身体的なケア、行先が決まっている、本人が行きたいところがあるというときに、行き方を一緒に考えたり提案したり、お金の管理で本人ができないところ、なくしたり無駄にしたりしないようにサポートするというところでしょうか。

 

後半はこんな人たちがガイドヘルパーとして仕事をしていますよ、という話をしたいと思います。

 

 

中/ガイドヘルパーからはじめよう座談会、けっこうマニアックな盛り上がりになっていますが、趣旨としてはまだガイドヘルプをやったことがない人にガイドヘルプをやってもらうためのきっかけですので、今自分たちが関わっている事業のなかで、こんな経歴の人がこんなふうにガイドヘルプを今やっているよというのを、いろいろ話してもらえるといいかな。マルクスさんのところはどんな人がいますか?

マ/いろんな人がいますね。まじめな人もいるし。レベルがあります。

中/そうするとまじめじゃない人もいるんですね?

マ/超まじめ(笑)。まあいろんな人がいます。

中/ガイドヘルプの仕事だけで食べている人もいっぱいいるの?

マ/うちでは家事援助、自立生活している方のサポートもやっているので、利用者さんの家で泊まって、とか。ガイドヘルパーだけだと難しいかもしれないですね。

中/ということは他にも何か仕事しながらやっている人も多い?どんな仕事をしている人がいます?

マ/オフィス、パソコン関係の仕事をやりながらやっている方もいます。

中/それは平日の月曜から金曜は会社勤めをして、週末、土曜とか日曜日に?

マ/あとあいている時間、ガイドヘルプってあいた時間に働けるので、自分がこの時間あいてますけど仕事ありませんか、というのもできるので、いつでもです。

中/なるほど。あき時間があればできちゃうと。いろんな仕事をしている人が関わってくれているわけですね。おもしろい人いましたよね。

マ/いっぱいいます。

中/ミュージシャンの人。

マ/ミュージシャンは夜ライブとかやっているので、朝、午前中から夕方まではガイドヘルプの仕事をやって、その後はライブとかバンドをやっている人もいます。時間的にもすごくいいです。

中/プロの人もいますもんね。竹島さんのところはどうですか?

竹/比較的主婦の方が多い。土日は子どものこととかは旦那に任せて、自分はガイドに出ているという方がいらっしゃる。比較的主婦層は多いです。他の仕事でも福祉系の人もいる。他の福祉の施設やグループホームなどでやっていて、夕方や週末はガイドヘルプに入っている人もけっこういる。平日は別の仕事をして、週末だけうちという人もいる。時間なので。うちだけで食ってるという人はいない。唯一いるとしたらこういうコーディネーターみたいな人。他はみんなパートのヘルパーさん。

中/じゃあコンビニやファミレスのバイトとかと同じようなノリでやれちゃうよね。障害者の支援というと専門的な知識や経験がないとできないんじゃないかと思っている人は多いですが、具体的にはまったく経験がない人は?

マ/支援に入って時間がたったら、途中で利用者さんの特徴とか覚えるので、経験がなくてもいけると思います。

竹/経験したことがある、接したことがあるレベルも含めて、この仕事をしたことがある人は1割くらい。他は初めて福祉の世界に足を踏み込みましたという人とか、福祉関係はあるけど、高齢者関係では家事援助などやったことがあるという人でも、いきなり来て、外出でお台場連れて行ってくださいみたいなのでもやれちゃう。ほとんどの方が未経験です。

中/うちもそうです。経験っていらないなと思います。だから私できるかなと思っている人だったら誰でも来てほしい。時間もその人に合った形でこういう現場がありますという案内もできる。自分のところの話だと、就職浪人中の人とかうちはけっこう来る。次何しようか迷っていて、再就職とか今難しいので、決まるまでの期間ガイドヘルプやってみますという人、決まった後終わっちゃう場合もあるけど、末永く休みの日だけやってくれたりすることもある。あと、体力的に長時間の仕事が苦手な人、フルタイムで仕事をすることが体調面で苦手だけど、短時間の仕事ならしっかりできるという人もいて、そういう人にとっては就業の機会としてガイドヘルプが合っている。最近増えているのは団塊の方たちが、退職された後に地域で活動をするなかで入ってきてくれて、あの人たちはいいですね。団塊バッシング強いけど、いい人は本当にいいですよ。

竹/うちも主力ですよ。主婦層でも、子育ても終わりという若い40代くらいの層の方もいる。でも5060代くらいで、子育ては一段落どころかお子さんは巣立ってしまって、あと亭主と何しようかというくらいの人が始める。ものすごく生き生きする。うちはヘルパーの平均年齢、今俺が一番若いんですよ。俺より若いヘルパーは、この間まで普通に就職したくらいの若い人がいたんだけど、いない。若いヘルパーさんがいっぱいいる事業所さんはうらやましいです。まあそれはそれで味がある。主力が60代のガイドヘルプ事業所って、なかなかいいですよ。何が来ても怖くないみたいな。

中/あの人たちはいろいろ経験しているから幅が広いよね。僕らもああいうふうになれるのかな、みたいな。

マ/うちも60代から、10代の人もいます。

中/マルクスさんはフィリピンですが、外国の方も?

マ/もう1人います。マレーシア。インターナショナルですね。

中/そういう意味では、支援者層、こういう人がいるというのは一言では言えないくらい。年齢も高齢から10代までやっているし、女性男性いるし、一般企業で働きながらやっている人もいれば、自分探し的に就職浪人中でやっている人もいる。時間さえあればという感じでいろんな人が関わってくれている。

竹/どの位置からも入ってこれる。

中/なのに何でこんなに人足りないんだろうね。

マ/僕はこの仕事をやって5年目ですけど、大変なときもあるけど楽しいです。僕は外国人ですが、いろんなところに行けて、一番遠くに行ったのは沖縄、北海道とか熊本とか。プライベートでは行けない。

中/自分が世界を広げてもらってますね。いい会社だな。今日こんな感じで話をしてきましたが、お客さんが3人いらっしゃいます。せっかくなので質問などあれば。

 

Q./ガイヘルの魅力は分かりましたが、ガイヘルだけでは食べられないという話もあって、他で受け皿がない人、仕事を他で得られなかった人がこの世界に入ってきたという話もあった。他でうまくいかない人がガイヘルをやったらすごくうまくフィットして、仕事としてやっていきたいと思ったら、この先ガイヘルとして、この世界で生きて行こうとしたらどういう道があるでしょう。

竹/仕事を単価×時間で考えると、単価はいろんな仕事のなかでもけっして悪くないにしても、時間の部分が一番ネックになる。利用者さん合わせなので、自分は朝8時から夜10時まであいてます、そこでケア行きます、と手をあげて、この5時間だけお願いしますとなると、残りの10時間くらいは使えない。そこを埋めていく作業、時間を埋めていくという考え方をすると、1つの事業所でもっている利用者さん、お客さんは限りがあるので、複数の事業所に登録をして、自分の時間をどうその仕事だけで埋めていくかというところにアンテナを張っていく。もしくは1つの事業所で決まったら、関連の事業所を探していく。もちろん自分の事業所にもっと働きたい、もっと仕事はないかということを最初にアプローチするけど、ここまでしか仕事がないというとき、そこの事業所と別のところで時間を埋めていくことをうまくやる必要があるかもしれない。そうすると結果的には、介護保険を含めると、障害だけ、ガイドヘルプだけだと平日の朝夕と土日という形だけど、介護保険の事業所だと昼間のケアがあったりとか、土日で割り切るのなら同じような業種の通所型の施設、たとえばデイなどに、月水金はフルタイムで行きます、土日は仕事がないのでガイドをやりますというように作っていくか、自分で探すのが難しければ関係者のコネを使う。やっているうちにできてくると思う。

Q./その場合、いろいろかけもちする、同業のなかで3つの事業所に登録した場合に、仁義が立たないみたいなことを言われたりしないですか?ここでもやってるのみたいな。

竹/ある程度地域で賢く分けていくのは必要かも。同じ区内の西部と東部とか。

中/ここだけの話ありますよ。うちではないけど。うちの方針は、ほかでやりたいと言ったらぜひやってくださいと、いろんな経験をしてほしいと思っているし、いろんなやり方を知ったうえでうちの仕事をしてほしいので。でもそう言われて他に行ったら風雷さんでもやってるの、と言われたり。

竹/それは企業努力みたいなところで、事業所のイメージはあるからね。え~みたいに言われちゃうところも。

中/古い体質のところだとかけもちを嫌うところも、比べられることを嫌がるところもあったりする。どこか他にもいいところないですかね、と聞いて嫌な顔をするような会社はあまり良くない。

竹/ヘルパーさんはこのご時世奪い合いなんですね。どこも足りない。なので変に自分のところでとこだわりすぎるような事業所は拘束されます。そのへんを見極めるのは必要かもしれない。

中/コンビニのバイトの抱え込みと同じで、その人に対する仕事の量は毎日4時間週5日あるんだけど、あえて2人雇用して、23日ずつ出す。他は仕事出さない。でもイレギュラーなことがあったときにその人を使いたいというのがあるので、姑息な考えではあるけど事業者としてはそういうふうに考えることもある。一概にはだめとは言わないけど、本当はいろいろやってもらったほうがいいけどね。

竹/そう考えるところも増えているとは思います。自分のところで抱えていても増えていかない、進まないというところで、うちではこれからヘルパーさんの他事業所との共有を進めていこうとしています。そういうスタンスの事業所は増えていくと思います。

 

中/はちくりうすさんはどうですか?

マ/それはいいですよ、と。みんな優しいですよ。ヘルパーもいろんなことを経験してほしいので、うちだけで働いてとは一切言わない。

竹/それがパワーになりますよね。いろんな顔をもっているヘルパーがいるという。同じ顔、どれを切っても同じ顔のサービスより、いろんな顔のヘルパーがいて、利用者さんにもいろんな顔のヘルパーが関わるというのはものすごい魅力だし。うちはリタイアされた方で、昔いろんなところの偉いところまで上りつめた人だけどそういうことをやりたいという人がいて、中国で仕事をしたことがあって中国語ペラペラで、利用者さんを中華街に連れて行った。物が出てくるのが注文したのに超遅かったらしい。そしたら中国語で怒鳴って、急いで持ってきたらしい。

中/じゃあフィリピン料理食うときは。

マ/実は利用者さんの家でフィリピン料理作ったんですよ。

竹/広がりをヘルパー自身も意識して、あなたの事業所に骨うずめますみたいなヘルパーより、いろんなところに登録して学んでいるヘルパーのほうが魅力的だし、それをうまく組み合わせていくと、結果的に週5ないし6くらいの稼働でだんだん埋まっていくかな。

中/あとちょっと切り口は違う話だけど、本当にガイドヘルプ、ヘルパーを自分の生業にしたいという人には、自分で会社作りなさいという話をするようにしています。誰でもかれでもではないけど、やりたいという思いがあれば居宅介護事業所を作ること自体は難しくないんですよ。数年のキャリアと、そんなに資本金をかけずに、人が動けばできる仕事なので、実際今年、うちでもかけもちで2社くらいで働いていた人が起業して、自分の会社を立ち上げだしたということがあるので、本当にこれで食いたいと思ったら、自分でやるのが一番食えるかなと思います。それは進めていきたいと思っているので、この仕事で会社を作りたいという人がいたらぜひ僕のところに相談に来てくれるといいなと思っています。あとはご質問どうでしょう。

 

Q./さきほどガイドヘルプで沖縄まで行ったと聞いてびっくりしたんですが、ガイドヘルパーをする場合、行動範囲や仕事の幅は特にないのでしょうか。行先の幅や、こういう仕事まではできないということ、やっちゃいけないことというのはないですか?

マ/仕事中で?

中/あと採用として?

マ/もちろん、虐待するとか、言葉の暴力とか・・・

竹/人権侵害につながるようなこととか。あと制度のなかでここまでしかできませんよというのもありますね。たとえばホームヘルプなら掃除はできるけど大掃除はだめとか。日常的なケアのサポートをする。大掃除とか餅つきとか、非日常的なところにヘルパーを使ってはいけないというルールはいくつかある。それぞれの区とか市でガイドヘルプの要綱を作っているので、ある市ではプールに連れて行ってはだめと作られているところもあれば、プールはOKとか。

マ/お風呂、銭湯に一緒に入るのがだめなところもある。銭湯までは行けるけど??一緒に入るのはだめとか。

竹/制度だから、入ってもいいけど入っている間は支援しているとはみなさないからお金は出さないという考え方とか。自分からみれば狭い意味での移動支援。銭湯までの移動はOK、銭湯のなかでは移動してないからだめ、帰るのはOKとか。そういう組み方をしている区もある。

マ/移動支援の場合は家事援助などできない。自宅前でお迎えして、出かけて、自宅前まで送るだけ、たとえば掃除とかできない。

Q./じゃあ本当にその専門ということになるんですか。移動支援なら移動だけで、仮にご家族から家事も手伝ってほしいと言われてもできないと。あと旅行とか行った際に、大きい露天ぶろなどあった場合、利用者様だけで入るのは難しいと思いますが、そういうときに一緒に入るとなったら、支援とは別になってしまう?

竹/そうとらえている要綱、自治体もあるし、そこも含めて、移動ではなく余暇の支援だと、物理的に移動だけでなく移動した先でどう過ごすかも大事だと、そこもサポートして帰ってくるまでが移動支援だと解釈しているところは、中でお風呂に入ろうが。厳密に言ったら、お出かけして上野動物園に行って、パンダや象を見ているうちは移動支援、レストラン入ってごはん食べているときは移動支援じゃないと言われたらアホですよね。そう考えると、あまり厳密に移動という言葉にとらわれないで、解釈として余暇支援としてとらえているところもある。そこは自治体によってニュアンスが違ったりする。できないことをあげていったら何もできなくなっちゃう感じですよね。

中/僕がやっている自治体だと、そこはあまり厳密に問わないです。必要な部分には対応しますと。ただある自治体が例として出していたのが、カラオケ8時間に移動支援はないだろうという話があって、カラオケ8時間はそもそもないだろうという。それは常識だよね。移動支援という枠の中で考えられることから逸脱しないことが大事だと思います。家の中の支援はまったくできないという話があったけど、本当に全然しないのかというと、一人でお住まいで、出るときにどうしても身支度が必要なときに、制度が該当するかしないかは別として対応することはあります。そうじゃなきゃ外出できないんだから。それを請求できるかできないかは別の次元の話。あと、利用者さんの損にならないようにしないといけない。損害があるようなことが起きないようにしないといけないという制約が、制度うんぬんではなくて前提としてある。利用者さんが傷ついたり損害を受けるようなことには絶対にしないというのが、僕らの大前提としてあります。あと行動範囲の話だと、多くの自治体が宿泊を伴わない支援で、と言っているのが実態です。移動支援での宿泊はない、制度の外になりますよと言われている。長期にどこかに行くのを送っていくのはできるけど、熱海に行って静岡に行って23日で帰ってくるのにずっと付き添うというのはなかなかできないです。

竹/可能性としては、いろんなやり方がある。たとえば送って行って、そこからは制度は使わないけど実費で、そこにいること自体ヘルパーが必要で、帰りは家まで帰ってこなきゃいけないので移動支援が使える。連続してできないというだけだったら、夜の時間を切って請求して、間の時間は実費でいただいて、というやり方はそれぞれ事業所の判断がある。沖縄旅行も現に行けるわけだし。

中/うちは熊本まで行った。それは行政と話をしたうえでそういうプランを立てて。あとはどうですか?

 

 

Q./さっき移動中の排泄の話がありましたが、基本同性の介助ですよね。でも男の子の利用者さんで、私は女性で、利用者さんが成人を迎えていてもご家族が女のヘルパーさんでも全然構いませんというパターンなら行きますが、私が見てきた子たちはだいたいデパートや駅のトイレでも1人で行って1人で帰ってこられる子だった。私は男性トイレに入れないのでそうだったですが、自分も行きたくなりますよね。そのときにどうすればいいかと責任者に聞いたときに、私が見ていた子たちは待っていられたので、トイレに行ってくるからここで絶対待っててと言って、すごい勢いでダッシュして排泄を済ませて戻ってきた。不安でそれならトイレ我慢しようと思った。でも男性の方で、長い移動支援中にお腹の調子が悪く大のほうをしたくなったときに、個室に一緒に利用者さんも連れて入りますか?

竹/それはケースバイケースでそうしたこともあります。

Q./身障者用トイレなら広いから一緒に、じっとしていられない子だったら男性同士だからという感じですけど、個室だったら、待っててと言っても待っていられない子で、でも自分はお腹が、というときどうされてますか?

竹/一定の場所にいることが難しい利用者さんの場合は、申し訳ないけど一緒に入ってもらえる場所を探します。せっぱつまってというのは事故だから一生懸命探します。イレギュラーという扱いになる。レギュラーのケアのなかで自分がトイレに行きたいときに、1人で待てない方の場合、よくやるのはあえて喫茶店でもなんでもお店に入ってしまって、そこで過ごす時間を作る。待て方がありますよね。駅の改札の前のトイレで待てる方と、それでは不安でお店で座った状態で待てる方と、いろんな待てる度合いに応じて場面は変えていく。最悪手をつないでいないとどっかに行ってしまう危険のある方の場合は迷わず一緒に入ってもらう。異性介助の場合はそういう傾向のある方は異性はつけない。女性同士なら同じ個室でもまだ入りやすい。男性でも同じで最悪入れる。危機管理上はそういう扱いをしています。異性介助で出すときに待てるかどうかは基準です。

マ/うちはそういうケースは聞いたことないです。僕だったら一緒にトイレに入るかなと思います。

Q./身障者用トイレが探してもなくて、男性も大をするところは個室で狭いですよね。大人同士で入っちゃいますか?

マ/誰でもトイレをやっぱり探す。この仕事は安全が一番です。

Q./それを日々、出かける先に探しておいたほうがいいですね。

中/最近コンビニのトイレが子連れ、車いすで入れるように、画期的に状況はよくなっています。あと何回かやったのが、本当に多動で自分じゃないとだめという利用者さんだけど1人だと不安だなというときに、お店に入って、おもにデニーズだけど店員さんにお願いをします。僕どうしてもトイレに行かなきゃいけないのであの方ここから1人で出ないように見ていてください、もし出ていきそうだったら声をかけて止めてください、と言って振り切って入っちゃいます。前に竹島くんと話していたのが、街中にデイサービスたくさんあるじゃない、ああいうの気軽に使えるといいよね、と。病院とか交番もありだろうなと。考えて出口がない話ではないと思っているのと、自分の体調とか利用者さんの状況を事業所とちゃんと話をして、安全確保と自分たちの体調管理をしっかりやっていくのが大事かなと。

竹/お腹痛いときって、自分でも切れないですよね。自分が出られるかという。

Q./これから冬になるとノロとかも怖いですし、急になったり。

竹/そうすると完全に切り離された環境で利用者さんが過ごさないといけなくなる。そういうトレーニング、自分自身のというよりも利用者さんとの関係上のトレーニング、ここまでは大丈夫かなという見極めとか。障害の特性で声がぶつぶつ出ている方は聞こえるから安心だけど、静かな方はものすごく心配でダッシュで出てくる。

Q./我慢しちゃうことが多くなりますよね。

竹/そこもプランに入れて、なるべくだだっぴろい公園とかは冬場とか体調が悪いときは行かないで、今日は体調が悪いから悪いけど公園2時間散歩じゃなくて、品川にしましょうかとか、水族館にしませんかという提案をするときもある。今日は公園は無理だから、と。

マ/ヘルパーさんは必ず支援に入る前はトイレを済ませたほうが安心かな。

竹/そこも含めての動きを作って。

 

Q./今回はガイドヘルパーをはじめようというキャンペーンの一環として、3つの事業所の責任のある立場の方々の話でしたが、友人ライクというところで気軽に始められそうかなとか、魅力的な仕事だと思いました。一方でその仕事がどういう意味があるのかを自分なりに反芻しながら聞いていました。自分自身も障害当事者の立場があって、障害者が地域のなかで暮らしていくにあたって、移動をサポートすることは重要だと思います。と同時にそれを取り巻く地域の人々がそれをどう考えるかとか、支える、実際ガイドヘルパーに入ることも大事だし、当事者が外に出ることによって、ああいう当事者の方もここにいるんだなとわかってもらうことも大事だと思います。というところでガイドヘルパーという仕事自体が、単に隙間仕事としてお金をもらえるというだけでなく、非常に社会的な意味がある仕事なのかなと思った次第です。そのなかでもうちょっと聞きたかったのが、この仕事自体、対社会というところでより意味を見出すとすると、サービス提供責任者という立場でそれを言葉にするとするとどのような言葉で表現されるでしょうか。

中/ガイドヘルプという事業が社会に与える影響ということでいいですか?

竹/どういう立ち位置か、ということかな?通訳だろうな、と思います。とくに知的障害の方が地域に出ていくときの通訳の1人としてヘルパーはいるだろうし、それを正面切って仕事ですとやっているのがガイドヘルパーだろうと思っています。なぜこの人が電車の一番前でやっているのかも一般の人からみるとなかなかわかりにくい状況で、知的障害をもった方だからそういうの好きなのね、というのも1つの理解の仕方だけど、でもなんで子どもと違うんだろう、小さいお子さんが見たい見たいとやっているのと何が違うんだろう、何が同じなんだろう、というところも、ガイドヘルプやっていると自分自身もきちんと理解できてくるし、それを世の中に伝えていくと、別に奇異な存在ではないんだとか、行動だけ見るとえっと思うようなことでも、なるほど、だから今車掌さんの真似をしているのね、とかいろいろ伝わっていく。それが無いなかで、イメージだけで一般の人は見ていると、変な人みたいな、しょうがないのね障害を持っているから、みたいなニュアンスで見る。でももう少し深いところで付き合うとそうだよねと納得できる部分が仕事しているとたくさん出てくる。だから今この人こういう言葉言ってるのねとかやっていると伝わってくるけどなかなかわからない。それを実体験しないまでも、周りにいる人が別にいいんだというところに立てる通訳をやっているのがガイドヘルパーかな。ちょっと掘り起こしているというか、まあそんなもんですよというニュアンスでやっているかな。

マ/利用者さんが言えないことがあって、ヘルパーさんは利用者さんの口になる。言えないことをヘルパーさんが第三者とかに伝えます。

Q./社会に与える影響というところで質問の仕方が悪かったかもしれませんが、どういう形でサポートできるか、どういう方法でサポートするかということもいい話だとは思いますが、それ以上に聞きたかったのは、ガイドヘルパーという仕事自体が地域や社会に与える影響が何かあるんじゃないかということ。

中/本来は知的障害がある人は普通に街中にいるし、社会を構成するメンバーの1人であることは間違いのないこと。でも歴史的に障害がある人を社会の構成から外して世の中を作ってきた経緯がある。大きくそれを変えてきたのが身体障害の人たちで、自らの力で表に出ていく。電動車いすはものすごく画期的な発明だったと思っていて、彼らが画期的に表に出て、参加させてくれじゃなくてここは自分たちのフィールドだ、何で電動車いすで2階に行けないんだ、公共施設だろう、エレベーター付けろよとやって、社会のバリアフリー化を進めたのは間違いないし、障害者トイレが増えたのも彼らのアクションが変えた。参加させてくれじゃなくてここは俺たちの場所だと。知的障害の人たちは、同じようにそこのメンバーなのに、いないことを前提に社会が作られてきている。だから今の状況、社会の側をサポートしているんだと俺は思っている。社会の側が障害をもっている人を受け入れる力がないから、僕らが助けてやると言って助けてやっている。障害者を助けているんじゃなく社会を助けている。本来いるべき人を排除するなんていうひどいことを社会にさせてはいけないから、それを改善していくのがガイドヘルプの本質なんだと思っています。

 

Q./今回のガイドヘルパーキャンペーンは、目的はガイドヘルパーが足りないから増やしていこうということと、ガイドヘルパーは何かということを知ってもらおうということだと思いますが、これから先、少ないガイヘルをどう増やし確保していくかという具体的な考えは?このキャンペーンはけっこうふわっとしていると思うが、果たしてどこに向かっていくのかとか、具体的な中身、今まで取り組んできたこととかこれから先取り組んでいこうということとか。

マ/どうやってヘルパーを増やしていくかですか?難しいですね。たとえば興味ある方やボランティアの方に声かけしたりですかね。うちも問題なんですよ。

竹/1つはガイドヘルプに特化した募集を23日なりでできる制度なり取り組みをやっているところもある。今だと主任者研修??昔だとヘルパー2級を取るのだってけっこうお金がかかる。あれをもっていないとできないというハードルがどこに必要なのかというのは思う。ヘルパー2級を3か月くらいスクーリングやって通信やって、実習して、取ったところでテキストの中には知的障害のことはこれっぽっちしかない。だいたいが介護保険の説明、高齢者の病気の話、介護技術、野菜の鮮度の測り方とかがばあっとあって勉強した中に、知的障害の福祉、支援なんてのはこれっぽっちしかない。そんな3か月も10万単位のお金をかけないとできないなんてこと自体が間違っていて、そんなこと知らなくてもいい支援をする人はたくさんいて、そこにどうスポットを当てるかは1つのポイントだろうと思う。自分の娘でも友達でもいい、世の中にいる身近な人に、ちょっと一緒に行ってみようと一緒に体験する。人を増やすというより周りを見てもらう。もちろん自分も興味があったら飛び込んでもらう。興味をもったら周りに聞いてみて話を広げてもらう。原始的かもしれないけどシステムではなくて、必要だ、やりたいとかというほうからのアプローチなんだろうという気がする。

中/3つやらなきゃいけないと思っていることがあって、1つは制度。竹島くんが言った、本当に必要なの、というところも含めて、ガイドヘルパーをやる人、障害者に対する対人支援をする人に専門性はいらないというところを構築しないとだめだし、それに基づいた制度にしていかないといけない。でも状況は逆行していて、専門性を高めるから講習化しますと。でもこれは厚労の罠だと思っていて、やる層を狭めていくことによってサービスを細くして、予算を使わないようにしていく、そこに専門性という罠を仕掛けていく。それに対して、みんなほいほい専門性を高めないといけないと乗っかっていくわけだけど、そうじゃなくて本当に必要なのは専門性じゃなく人と付き合う力だと、だからいろんな人、数多くの人ができるということに社会認知を変えていく必要があるし、産業構造の変化によって工場労働とか農業労働がなくなったせいで活躍できる場が減っている労働層がある。僕はニートとか言われている人たちはそうだと思っている。そういう意味で介護労働は基盤を支えるような労働だから、産業構造のシフトも含めて国の考え方を変えていく努力を事業者がしないといけないと思っている。そこをやらなかったら圧倒的には増えないはず。それは大きな話だし僕らの目の黒いうちにはできないかもしれないけど、言い続けないといけない。次に、僕ら自身が増殖していこうという思いがあるかどうか。思っているからここにいるんだけど、自分のところにいる支援者さん、ガイドヘルパー11人は、ガイドヘルパーを増やしたいと思ってくれているかはすごく大事だと思うし、当事者も家族もガイドヘルパー足りない、困っているじゃなくて増やしたいと思っているか。それによって口コミが生まれてくるし、口コミはすごく影響力があると思う。ガイドヘルパー30人が増やしたいと思ってくれて、自分の知り合いにどう?と、自分の仕事の自慢をしてくれる、面白いと伝えてくれる、そう思ってもらえるような職場作りをしなきゃいけないと思っているところです。もう1つは2つめと似ているけど、事業者がもっと、人が足りないということ、こういう仕事があるということを発信しなきゃいけないと思っています。今回のキャンペーンはなんでふわっとしているかというと、ガイドヘルパーという言葉を知らない人に、1人でも多くまず知ってもらう、そこから始まるんじゃないかと。まず知らない、この仕事があること、ガイドヘルパーという言葉さえ知らない人が世の中の大半。まずは知るところから始めようという、3つのことをやっていかないとと思っています。解決策というより課題です。

第一回目終了

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